わたしはチェスが嫌いだ。
なぜこんなにもチェスを嫌うのか理由はわかっている。
チェスをする男が嫌いなのだ。
彼らはチェスを知らない、もしくはできない人間の存在を認めない。
ルールを知らなければ覚えろと、知っていれば教示してやろうと。彼らは強要する。
そして愚昧にも、あの似非知的遊戯の優劣と、知的レベルの優劣が相関していると彼らは本気で思い込んでいる節がある。
仮にそうであるならば、わたしが出会ってきたほとんどの男は、わたしより知的レベルが劣っていることになってしまうのだが、彼らにとって幸いなことにわたしはチェスをやらない。
知的であるはずの彼らは、猫が爪を隠せることさえ知らないのだ。