ミームボルグの魔女

壊れた時計台

ミームボルグの魔女の噂…

 

ミームボルグ家の最期の娘、ミータム・ミームボルグは生きている。

そしてこの町で度々出くわすヴェッグルゴーストと呼ばれる奇妙な生き物を創りだしている。

 

この噂の出所を調べる為、私は古い雑誌を漁っていた。

 

分かった事はミータム・ミームボルグは、

何者かによって殺害されたという事、

そしてその死体は忽然と姿を消したという事である。

 

ニュースぺーパーにはそこまで詳しく載っていなかったが、

むしろ当時の週刊誌にはどの雑誌にも詳しく載っていた。

ミータム・ミームボルグは雑誌記者が多くいる中、殺されたのだ。

 

詳細を書くと…

からくり時計のお披露目会

ちょうど町の中央に現存する建物でとても目を惹くものがある。

大きなからくり時計台である。

 

しかしそのからくりが実際に動いたのは1度きりであった。

 

時計台はシャトランジ50回の記念と同時に

ヴィルヘルム・ミームボルグ…ミータムの父のチェス棋士殿堂入り記念として建造され、

その日が記念お披露目会であった。

 

ちょうど正午のカウントダウンと共にからくり時計のスイッチが入り、

同時にからくりが起動、5分程度の物語を楽しみ、

立食パーティー…という流れだった。

 

からくりの内容は、

この町に古くから伝わる童話の1シーンをモチーフにしたもので

敵国の王子と恋仲になっていたお姫様が戦場で平和を訴えかける、というもの。

兵隊たちに斬られたお姫様を王子が抱きかかえ口づけをし自害する。

その姿を見て哀れに思った両国は和解して平和が訪れるという内容。

 

カウントダウンが終わり時計が起動すると、

文字盤が大きく動き、ゆっくりとからくりが登場する。

 

誰もが儚くも美しいメルヘンの世界に酔いしれる筈だった。

 

しかし…

 

そこにはお姫様の人形はなく、その代わりに縛り付けられた少女の姿があった。

どよめく観客たちを無視してからくりは起動する。

 

兵隊たちの人形は止まることなく、

少女を代わる代わる刺していった。

泣き叫びながら死のダンスを強制される少女…

 

そして王子様は口づけをし、自らの腹を彼女もろとも貫く…

おそらくこれが致命傷となった。

 

終幕したからくり内部より発見された愛娘の死体を抱え

ヴィルヘルム・ミームボルグは絶望した。

彼にとっては余りに悲惨な記念日となってしまった。

 

少女の血で染まったからくり時計はその後作動しなくなり、

今でも壊れたままである。

 

事件の後、ミータムの死体は警察で一時的に保管されたが、

忽然と姿を消したという。

 

死体泥棒という可能性もあるが、

実の父が連れて行ったのではないかという見方もある。

その日からヴィルヘルムを見た者はいないのだから…

 

魔女の噂

ヴェッグルゴーストの目撃証言は、実はミータムの死よりも以前からある。

ゴーストと共にいる少女…についても、実は以前から報告されていた。

かなり古くのオカルト系雑誌を賑わしていて、初出が何処かは分からない。

 

しかしそれほど昔から語られてきた話である。

 

雑誌を賑わした魔女とミータムが同一人物であるならば、

彼女は非常に昔から少女の姿をしていて、

ふと、ミームボルグ家の娘として過ごし、

時計台で殺され、再び魔女と呼ばれる存在となった。

 

という事になる。

 

そこに大きな矛盾がある以上、

ミームボルグの魔女という噂は出鱈目であるとしか言いようが無い。


管理人 K


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