ミームボルグの魔女

愚者の入口

病院にて

私には友人と言える存在がいない。

それは一般的には嘆くべき事なのであろうが、今の私には幸運と呼んだ方が良いのかもしれない。

もし私に友人がいたのなら、今頃は気狂いのレッテルを貼られ5丁目の精神病院にでも放り込まれていただろう。

あそこは巨大な檻で固められ、出る事を許されない監獄のようなものだ。

 

そんな事を考えながら、私は用を足しに病室をでた。

小さな頃から病院などと言う所に縁はなかったので、不慣れな事ばかりだ。

 

少女のまぼろし

薄暗い廊下を歩いていると、違和感に気づく。

おかしい、人の気配がしないのである。

 

大部屋…談話室…食堂…

 

普段は老人達のたまり場と化していると言うのに、

少し不気味だ。

 

ふと、奥の部屋に少女が入っていくのが見えた。

歳の頃は7、8歳と言ったところだろうか…

 

しかしあの部屋は病室ではない、

入ったことはないが遺体安置室という噂だ。

 

私は少女を止めるべく、急いでその部屋の扉を開けた。

 

部屋には何もなかった。

 

噂の遺体も今しがた見た少女の姿も、何もなかった。

 

いよいよ私の頭はおかしくなってしまったのかもしれない。

幻覚が見える事がどれほどの苦痛か、おそらく正常な人には理解されないだろう。

などと考えていると、自然と涙がこぼれてしまう。

 

精神異常者

ウスボンヤリもアサブクロも疲労や酔いによる見間違いの可能性はある。

しかし、今の少女は何だ?

私ははっきりと見たのだ、酔って等いないし、疲れてもいない。

しかし、現に少女などいない。

精神の異常を疑うのが当然の流れであろう。

 

私は医者に相談する事にした。

医者であれば聞いてくれるだろう、頭のおかしい愚者の戯言を…

 

 


管理人 K


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