ミームボルグの魔女

魔 -始

彼女はそこに在った。

あたかもそれが当然のことのように。

たとえるならば、昼下がりのキッチン、後ろ姿のエプロン、木の実のパイ、幼い記憶。

 

いや、そも彼女という呼称が適切なのかさえあやしいものだ。

なにせ誰一人として彼女を観測してはいないのだから。

おそらくわたしを除いては。

別の誰かが彼女を観測したのならば、なにか別の呼び方をするのかもしれない。

 

「あの」時点においては、存在に意味すらもない、彼女はそうしたものだったに違いない。

 

ただ、魔が差したのだ。

赤レンガと魔女

管理人 H


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