深夜の出来事
この町の3丁目には劇場があった。
日付がちょうど変わるころ、付近のバーで一人酒を窘めていた所、常連の一人が大慌てで入ってきた。
何でも劇場が小火を出しているので人手が欲しいとの事。
私が何かの力になるとは思えないが、見てみぬふりも出来ない雰囲気であった。
燃える劇場の猫
劇場に駆け付けた所、火の勢いは小火どころではなく火焔であった。
付近の住人がそれぞれに桶を抱え、入れ替わり立ち代わり水をかけているが一向に収まる気配はない。
ふと私は走り回る住人たちの中に奇妙な黒猫のような生き物が佇んでいる事に気づく…
頭には麻袋を被り耳は兎のように長く、右後ろ脚が無いその生き物は、
私に気づくと犬のような鳴き声で鳴いた。
人ごみの中その黒猫のような生き物はいつの間にか消えていた。
そして…
次の瞬間気づいたら私は病院のベッドの上であった。
医者に事情を聞くと、炎上した劇場の看板が私の上に崩れ落ちてきて全身大火傷だったようだ。
管理人 K