踊り場の絵画
踊り場の絵画を見ていた。
薄暗い湖に浮かぶ少女の姿が描かれたそれに
絵画などに全く興味のなかった私も魅かれるものを感じていた。
少女は眠っているのだろうか、それとも…
シャトランジ
飲み終わったカフェラテの紙カップをゴミ箱に捨て、
私は調べものの続きをする事とした。
この町の図書館の開館時間は短い…
本の貸し出しはしていないので短い時間を有意義に使わなくてはならない。
それにしても…
自分とこの発行してるバックナンバーの保管に穴があるなんて
ウチの会社の管理も杜撰なものですね
そうだね、当時の記事がここに残ってればいいのだけれど…
探しているのは5~60年も前の記事である。
今私達は、この町に点在するチェスピースのオブジェの成り立ちを調べている。
ちょうど図書館の裏手にも黒いキングの駒のオブジェが設置されていた
そこには経年劣化でほとんど読めない文字が彫られてある
「h1 :The King is a fighting piece. Use it」
何故そんなものを調べているのかと言うと…
毎月発行している雑誌で町の歴史コラムを試験的に掲載した所、
老人達に人気が出た為連載になったのだ。
本来は若者に歴史を知ってもらうための企画だったのだが、
結果的に発行部数が伸びるのであれば、
上は老人にウケようが若者にウケようがどっちでもいいらしい。
当時の事を覚えている老人達に聞き取りをした所、
何らかの記念に設置されたオブジェであるという事らしいのだが…
あったよ、設置された時の記事
さすが先輩、仕事が速いですね
第47回シャトランジを記念してチェスピースを象ったオブジェが町に設置される
全14躯設置されたチェスピースは優勝戦の対局を町全体で表現した。
昔はシャトランジというチェスの大きな大会があった、
今はすっかり流行も廃れて開催されていないが、この当時はお祭り騒ぎだったらしい。
当時最強と謳われていたヴィルヘルム・ミームボルグを倒すべく
才能豊かな一人の若手棋士に様々な企業が投資し、
研究を重ねて挑んだ名勝負だったようだ。
結果は黒(ヴィルヘルム)の勝利となっている。
この勝利を持ってヴィルヘルムの10年連続優勝が決定した。
若手棋士の名前は当時のニュースペーパーには載っていなかった。
管理人 K